元はと言えば金城哲夫が円谷文芸部に所属していた時に遺していった企画であったらしい。
しかし赤字を出して文芸部が活動停止後金城も退社したためにそのまま置いてあった企画を円谷が作品化した。
パイロット版の主人公鏡京太郎役は柴俊夫、しかも本名の柴本俊夫名義でクレジットされてる
あと、他の出演者には南沙織もクレジットされていた。
パイロット版のミラーマンのデザインは完成版とはかなり異なる。顔の下半分は丸出しになっている。
これはNG版とされマスクを作り直し、スーツも新しく作り直した。
石田信之はそれまでに『ケーキ屋ケンちゃん』(1970年、TBS)の実績はあるにはあったが、本格的主演は初めてであった。
そして、鏡京太郎の性格も変えられた。
柴俊夫バージョンの京太郎はどう見ても硬派っぽいが、石田が主演するにあたりナイーブな面が強調される性格となった。
なんのことはない『機動戦士ガンダム』(1979年)のアムロ・レイ(cv古谷徹)や、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)の碇シンジ(cv緒方恵美)の先駆けみたいな弱っちい主人公像に変えられたのである。
今でこそこう言う主人公はありきたりだが、当時としては斬新だった。
大概は熱血タイプが殆どだったから。
同時期の『帰ってきたウルトラマン』の郷秀樹(団次郎)は、すぐに増長する傲慢な性格だったが、ひ弱ではなく、戦いを積む毎に精神的に成長していく主人公だった。
古谷徹の出世作『巨人の星』の星飛雄馬も、友達が伴宙太(cv八奈見乗児)だけであとはライバルの野球にのめり込むためにコミュ障だったが(原因は頑固親父星一徹のスパルタ教育)屈辱を闘争心に変える性格だった。
その点でいくと石田信之版鏡京太郎の性格は当時としては情けなくひ弱な主人公としてかなり視聴者に指摘されていたらしい。
戦いを積んでも精神的にひ弱な性格はさして変わらず、インベーダーの陰謀で鏡を全て隠され、変身不可能となった京太郎が「もうダメだ‼︎」とナイフで自殺未遂をはかった際に自分の姿がナイフに映り変身したパターンがある。
作品としては予想以上の成功作で、一時は『帰ってきたウルトラマン』に視聴率を上回ったこともあったと言う。
セットをケチって怪獣の造形もウルトラマンよりも劣りセットのしょぼさを夜の戦いにしたり予算不足だったのによく健闘した部類である。
裏番組だった『シルバー仮面』(宣弘者、コダイ企画・日本現代企画、TBS)が全く視聴率が上がらず、途中で巨大化の案が出た時にコダイ企画の実相寺昭雄が、「それなら我々は製作から退く」と降りてしまい、巨大化するも視聴率はさほど上乗せがなく、TBSのプロデューサーの橋本洋二氏曰く『失敗作』になってしまったのと対照的である。
結果は対照的なことになってしまった。
変身ヒーロー物の華である変身ポーズも明暗を分けたとも言われている。
ミラーマンの変身ポーズは鏡京太郎が手を上に上げて四角形を作る形で手を下に下げ両手をクロスする『ミラー!スパーク‼︎』という変身ポーズである。
しかしシルバー仮面は実相寺も佐々木守も考えていなかったらしく、仕方なく主演した柴俊夫が「えいっ!」と言って変身したり、それではまずいのでのちに「アタック!」になり、巨大化の時は「シルバー‼︎」に変わった。
しかし変身物の華である変身ポーズ考えてないとか、トホホだろそれは、負けて当然だ。
後期のミラーマンのEDの『戦え!ミラーマン』はかなり哀愁漂う曲で主演した石田信之、安田隊員役の杉山元、あとは女性二人と児童合唱団の曲で、最初の歌い出しの歌詞はこの四人が歌いあとは児童合唱団が歌うと言う二段形式(二番も)と言うあまり類を見ない歌だった。
テレビ版では児童合唱団の歌ったところしか流れず大人四人が歌った歌詞であるパートは流れなかった。
その大人四人が歌ったパートの歌詞が重いからだろうな。
紹介するとこう言う歌詞。
1
きらめく夜空にひとつ平和の願いをさけぶ正義の剣を抜くぞ力を合わせて(大人パート)
2
またたく夜空にひとつ希望の未来をつかむぼくらとともに行くぞ力を合わせて
と言う大人四人のパート歌詞があり以降は児童合唱団の歌詞が続くのだが、主題歌と比べかなり哀愁漂う感じに作られている。
今ではこんな凝った曲は皆無だろう。二段パートに分かれた曲自体珍しいが、ここまでの曲はまずは作れまい。
子供番組だからと言って手を抜かなかったいや、マジに作っていた証拠である。
斬新な主人公設定、哀愁漂う作風、そして哀愁漂う後期ED、かなり良く出来たヒーロー物である。同時期の『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンA』よりも傑作だと思う。
トリプルファイターとは、正体は宇宙人の早瀬三兄弟妹が、レッド、グリーン、オレンジに変身し、デーモンに立ち向かい、週末に三人が合体し、トリプルファイターとなりデーモンの怪人を倒すと言う等身大ヒーロー番組だった。
視聴率はまずまずだったが、予算が死ぬほどなく、怪人が頭以外は手抜きだったり、デーモンカーがスバル360を艶消し黒に塗っただけのものだったりとかかなりトホホなんだが、功績と言えば元祖パンチラヒロインの早瀬ユリ(笛まゆみ)がいたことだろう。
今や円谷プロはその面影すらないが70年代は化け物みたいな製作会社であったことが窺い知れる。